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ジゼルが頷く。
「バチカルに私の元教え子がいるのだけれど、その子は昔、世界中を回っていたことがあるの」
「世界中!? 旅してた人?」
「ええ……預言戦争(スコア・ウォー)についてはわかる?」
「えっと……多分、聞いたことないかな」
「そう、なら簡単に話すわね」
ジゼルが再び食卓の椅子に座ったので、あたしも倣って正面に向かい座る。テーブルの上にはあたしたちの腕しか乗っていない。
「およそ二千年前、一人の博士の尽力によって第七音素(セブンスフォニム)という音素が発見された……音素についてはわかる?」
「あ、うん。第一音素(ファーストフォニム)から第六音素(シックスフォニム)まであって、第七音素は特別……くらいだけど」
「まぁ、音素の性質に関しては、サクラにはまだ難しい知識は必要ないわ」
「うん。で、その第七音素が見つかって戦争になったとか? 奪い合いとかで」
「鋭いけれど、ここで起こったのは預言戦争ではなく、譜術戦争(フォニック・ウォー)と呼ばれる戦争。その戦争の影響でプラネットストームに不具合が生じて、地中から障気が発生したの」
「障気?」
「毒ガスのようなものだと思えばいいわ。その障気から逃れるために、プラネットストームを再構築し、大地を浮上させる計画が実行されたのよ」
「浮上……って、じゃあ、ここって空中!?」
「それも20年ほど以前の話。今は地上に降下させているわ」
「へー……」
「その大地を浮上する計画を立案したのが、かの有名なユリア・ジュエよ」
「あ。あの教団で信仰してる女神様?」
「いいえ、彼女はただの人間だった。女神ではないわ」
「そっか。……でも、キリストも人間だったけど今は神様だし……」
「キリスト?」
「あ、や、なんでもない!」
首を振って続きを促す。
似たような事例でも世界が違うんだし、同じ考えにはならないんだ……。
ずいぶん哲学っぽい(?)考えに違和感がして頭を振る。
ジゼルは促されるままに続けた。
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