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ぶるり、と体が震えて目を覚ました。……寒い。
自分が椅子の上に丸まって寝ていたのに気付いたら、急に背中が痛くなってきた。
「んー……」
ごろりと反転して背もたれに背中をつけると、部屋全体が見渡せた。
そこで違和感に気付く。
「あ……れ? うん?」
三人掛けのソファーだったはずが、一人掛けの椅子に。硝子製だったローテーブルが木製のデスクに。リビングが知らない部屋に変わってる。
……変わってるっていうか、場所が違う。
「な、な……? あ、え?」
わけがわからなすぎて言葉が出てこない。しかもこれ、多分夢じゃない。
ほら、夢だとどんな状況でも納得できるじゃん? それがないってことはつまり、そういうこと……?
「……どこ、ここ? 流花姉? 流花姉!」
名前を呼んでみても、当然のように返事はない。……って、いやいや、返事がないわけないじゃんか。じゃあ誰の家にいたの、あたし。
椅子から立ち上がって改めて部屋を見回すと、やけにこざっぱりしているのがわかる。というか、ものすごい殺風景。
あたしの座ってた椅子とデスク以外にあるのは扉が二つだけ。片方を開けると、どうやら廊下に出る扉だったらしい。
もう片方を開けて目に飛び込んできたのは、ずらりと並んだだけの本の数々。書庫のようなそこは本独特の匂いがして、苦手なあたしはすぐに扉を閉めた。
ここまでのアクションでわかったことは一つだけ。……ここがどこだかわからない。
「……夢、なのかな……だよね、うん、夢!」
とりあえず仮定としてだけど。
もう一回寝たら治るだろうか? 治る、って言い方も違うかな。戻る? 帰る? ……って、それじゃどっかに瞬間移動したみたいじゃん。中学二年生じゃあるまいし。
勝手がわからず、とりあえずもう一度椅子に座って目を閉じた。眠気なんて来るはずもなく、それどころか不安感から何度も目を開けては閉じるを繰り返す。
……まさか、帰れない?
いや、だから帰るって言うとまるで……。
「…………!」
がちゃり、となんの躊躇いもなく正面の扉が開く。確か、廊下側の扉だ。
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