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ほぼ反射的というか、直感的に椅子から飛び退いてしゃがみこんだ。着いた先は、木製のデスクの下。
けど、飛び退く際もしゃがみこむ時も壮大な音をたてたせいで、多分意味はない。
現に扉を開けた人の足音、ぴたりと止まってる。誰か知らないから顔なんて浮かばないけど、どんな表情をしてるかくらいは想像できた。
「…………」
怪しまれるのはわかってるのに、息を殺さずにはいられない。
ありえないことだけど、相手が何事もなかったように去ってくれないかと考える。
どうか、どうかどうか……!
「……誰だ」
祈りも虚しくかけられる声。それ自体も冷たくて怖かったけど、それ以上にあたしの背中を凍らせる音がした。
カシャン、と金属の音。
ドラマやアニメの効果音とは少し違う、けどなぜだか銃の音だと認識できた。
銃……銃って、鉄砲? あの、狩りとかで使うやつ? 人とかも殺せる。
……ころせる……?
「…………っ」
ガタガタと、手の先が震えた。先だけじゃない。肘まで、肩まで、脚も。
真冬の寒さのように、身体中が喉が大袈裟に震えた。
「この辺りは一般兵は立ち入り禁止だ。すぐに出ていきなさい」
「…………」
「……おとなしく出てこないなら、どうされても文句は言えないわよ」
「…………」
「…………」
カツカツと鳴るヒールの音。それが段々と近づいて、すぐ傍でぴたりと止まった。
体をぎゅうっ、と縮込めてできるだけ隅に逃げる。意味がないのはわかっていても、必死に背中を角に押しつけた。
何、何なに!? あたし、殺される? なんで? 入っちゃいけない場所に入ったから? 知らないよ、そんなの、だって、いつの間にか、本当に、いつの間に……!
「…………っ」
四角く切り取られた視界から、さらり、と金色の髪が流れ落ちて見えた。
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