冷たい青色

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 *** 「総長!」  廊下を歩いていると、一人の一般兵に呼び止められた。鎧兜で表情は見えないものの、その声音は焦っているようだ。 「どうした」 「はっ! それが……」  そこまで言って周囲を憚る。何か言いづらい内容なのだろうか。 「……場所を変えたましょうか?」 「い、いえ。自分はいいのですが……その……」 「……? 早く言いなさい。私も暇じゃないのよ」 「も、申し訳ありません! 実は……昨日総長の部屋にいた少女のことなんですが」 「少女?」  疑問符を口にしてから、すぐに思い出した。あの黒髪の子供か……まさか、また潜り込んだとでも? 「あの子がどうかしたの?」 「それなんですが……」  ***  兵士の知らせを聞いて表に出ると、報告通り、彼女はそこにいた。  教会から街に続く階段の途中、一般用に解放されたベンチの上で眠っていた。……しかも昨日と同じ服装のまま、だ。  放っておくわけにもいかず、教団内にある自分の仮眠室まで運ぶ。途中誰にも会わなかったのは幸いか……。 「……はぁ」  午前中に予定していた仕事が急ぎでなくてよかった。全部明後日に廻して、明後日計画していた会議は取り消して、ああでもそうしたらキムラスカとの合同演習の計画が立てられなくなる。だとしたら来週に廻すか。そうしたら会議室の確保もしないと……少しずつずれていくスケジュールに舌を打った。  第一、何を律儀にこの子に付き添っているのか、私は。  部下にでも見張りを任せて仕事に向かえばいいものを……。 「…………」  とは思うものの、あの怯えた表情を思い出してそれも止めた。  ほんの数分とはいえ、見知った顔があったほうが安心するかもしれない。……まあ、私も怖がられていたけれど。 「……ん……っ」 「…………!」  微かな唸り声に、ベッドサイドのテーブルに着いていた肘を離す。  大袈裟な自分の反応を恥じながらも、ぐずぐずと顔を歪める少女の動向を見守った。  
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