プロローグ

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「充~ 今日はバンドの練習あるの?見に行っていい?」 僕の返事も待たずに いつも薫は 腕を絡めて もう一緒についてくる気満々で スキップしながら 鼻歌を歌っている 薫の好きな B.Bキングのスタンドバイミ―だ でも 薫はオリジナルより ジョンレノンのカヴァ―の方が好きだと言う 少しハスキーで 切ない声がいいんだそうだ そういえば 僕がギターだけでなく バンドで歌い始めたきっかけは薫の影響が大きかった 薫はハスキーボイスフェチだ いつしか 僕はわざわざ大声を出して 喉を潰したり カラオケに行って 何時間も連続で歌い続けて 薫好みの声になろうと張り切っていた そして それまでのバンドを辞めて 新しく自分の歌えるバンドを作った 週に二回 駅前にある小さなスタジオで練習し 月に一度 チケットノルマナシで やはり駅前にある小さなライブハウスに出られるようになった ノルマはないけど 薫が客を集めてくれ その客がまた仲間を連れてくるといった具合で 段々と僕達は名前が知られるようになってきた
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