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「王子、そろそろ妃を決めて頂きたい!」
きらびやかな机で執務を熟す青い青年の前には、大きな声を出す男。
「…大臣、何度も言っているだろう。自分の事は自分で決めると」
ペンをカタリと置き、男を見据える瞳には威圧感。
「しかし――!」
尚も食い下がろうとする男に、青年の横に控えていた老人が彼の肩を掴む。
「只今、執務中でございます。お引き取りを」
有無も言わせぬ口調で男を部屋から退室させた。
「………じいや、すまない」
青年は疲れたように溜め息を吐き、眉間を押さえた。
「いえ、お気になさらず。……少し休憩に致しましょう。只今、お飲み物をお持ち致します」
優しげに微笑み、部屋から出ていく老人。
それを見送った後、窓から見える城下街を見下ろした。
「…………妃、か………」
何処か寂しく、諦めきったような顔をしながら……――
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