プロローグ

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  「母さん、これは何処に運べばいいの?」 小さくも豊かな村のある家に紅い服を着た女性が荷物を下ろす。 「あぁ、ありがとう。それは蔵に入れといてくれないかい?」 話し掛けられたのは、女性よりも歳老いた女だった。 「はぁ~い」 女性はニッコリと笑って、また荷物を持った。 「姉ちゃん、遊ぼう!」 「こら、お姉ちゃんの邪魔しないの!」 女性の腰に抱き着いてくる小さな男の子とそれを注意する女の子。 「もう少し待っててね。これを置いて来たら沢山遊んであげるからね」 優しく笑い、男の子の頭を撫でる女性に女の子はチラチラと見る。 「お姉ちゃんを気遣ってくれてありがとね」 同じように女の子を撫でれば、頬を紅潮させて嬉しそうな顔をした。 「早く、早く!」 男の子が女性のスカートを引っ張り、先を促す。 「はいはい」 女性は笑って、歩みを進めるのだった。  
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