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「もうすぐかしら?」
大きな国の城の中、ある一室のベットの上にはお腹の大きな女性。
その顔は慈愛に満ちている。
「医者は明日明後日と言っていたな」
その傍らには、そのお腹を触る男性がいた。
女性もお腹を撫で、優しく微笑む。
「医者は女児だと言っていた。これでこの国も変わらず、安泰の道を進むのだろう」
期待の込められた瞳に、女性も頷いた。
「そうね。いらない争いが生まれなくて済むわ」
二人の期待の眼差しに応えるように、内側からお腹が蹴られる。
「ふふふ、元気だ事……――っ!」
そう笑っていたのも束の間。
突然、女性が苦しみだした。
「っ!!?大丈夫か!?」
傍らにいた男性が立ち上がり、女性を支える。
「っ………あなた、お医者、様を……っ!」
お腹を抱えて苦しむ姿を見た男性は、扉に向かって声を張り上げた。
「誰か!誰かおらぬか!!?」
その声を聞き付けた者が慌てて顔を出す。
「医者を呼べ!陣痛が始まった!」
それと同時に、城の中は慌ただしく動き出した。
この後、医者から告げられる重大な事実が、運命の歯車を廻すとは誰も思わずに………………――
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