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手紙
「………」
便箋の上のペンが動く。
時たま止まりながら、ペンは文字を生み出していく。
ペンを動かしているのは少女。
見た目十才くらいの少女である。湯上がりの髪を上にあげ、タオルで巻いている。
机に向かい、便箋に文字を書いている。
机の上には少女の私物がある。
学校の教科書、ラックにあるのはお気に入りのアーティストのCD。写真立てもある。
そこには二人の少女と少年の笑顔が写っている。
夏に撮ったのか、少女の恰好は薄着で麦わら帽子をかぶっている。肌も小麦色で、健康的である。
逆に少年は病弱なのか、車椅子に乗っていている。
白いワイシャツを着て、肌は日焼けを許さない程に白い。
二人の後ろの景色は、海。
砂浜に波の軌跡を残している。
「…………」
少年はペンを止め、一度便箋に目を通す。
誤字や脱字、変な言い回しがないか確認をする。
直すところがなかったのか、少女は便箋を綺麗に三つ折りにし、脇に置いてある封筒にいれる。
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