事件のはじまり

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頭では、分かってた。 非常停止ボタンを押す、向かいのホームの男性が正しかった。 でも、「誰か奈央を助けて!」 母親の悲痛な叫びに、俺の体は反射的に動かされた。 馬鹿だよなぁ 線路に足が着いた時、既に電車は目の前で、ナオは泣いていた。 妙にスローモーションに感じる中で、俺はナオを隣の線路へ押しとばし、自分も隣の線路に転がろうとした。 右から左へ体重移動する。 電車の光で眩しくて前が見えない。 そんな光り輝く場所で、俺の世界はブラックアウトした。
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