§3 Activation(始動)

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「私の父親と周平さんの父親は酒飲み友達で懇意にしてましたが、私と周平さんは軽く付き合う程度でした。尤も、その父親も既に草葉の陰、母親も2年程前に旅立って行きました。今、この家に住んでいるのは私と嫁、そして、娘の3人だけです」 「そうでしたか……周平さんがどんな人だったか、知ってる範囲で教えて頂けませんか」 「気さくな人でした」 考える事なく即答したのは浅いながらも付き合いがあった事を裏付ける。 「詰まり、人に恨まれるようなタイプの人間ではなかったと?」 「ええ。お金には汚くなかったですしね。私も何度か融資をしてもらった事がありますが、キツい時には半年ぐらいは平気で待ってくれました」 「では、事件が起きた時にはさぞ驚いたでしょう」 卓司がこの質問をした時に尚也の手が一瞬止まるが、また何事もなかったように動き出す。 「それはもう。私の家は勿論、この辺は蜂の巣を突いたような大騒ぎでした。それに毎日のようにテレビや新聞などのマスコミが押し寄せて来て取材をしてましたね」 その男性は口吻(こうふん)して顔を紅潮させる。 「……お店の方に出入りする客は少なかったみたいですが、何かトラブルがあったような事は聞いてなかったですか」 「聞いてないです」 「そうですか。あっ、ちょっと長くなってしまいました。最後に1つだけ。周平さんの悪い噂とかは聞いてないですか」 「悪い噂!?」 この質問に対しその男性は首を傾げ小さな目と目の間に少し皺を寄せる。 「例えば、何か犯罪絡みのような……」 「う~~ん、断言はできないですが、私は聞いてないです」 「私からは以上です。長々とありがとうございました。尚也君、何か聞いておきたい事ある?」 下げた頭を戻して卓司は隣の尚也を見る。 「では、私も1つだけ?」 「何でしょう」 そして、その男性は聞き返しながら卓司に向けていた目線を質問があるという尚也に向けた。 「お隣の2階には誰も住んでないのでしょうか」 「隣と言うと、コインランドリーの家……ですか」 「そうです」 米屋の右側にある車庫から少し離れた所に2階建ての木造の古い家がもう1軒ある事からその点を確認したようである。
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