『エピローグ』

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深瀬の話を聞きながらも、目は紫央里の姿をしっかりと捉えていた。当の紫央里はと言えば、少し離れた所にしゃがみ込み、手にした小枝で楽しそうに土をほじくり返している。 『……そんな訳でしたから本当は直ぐにでも福島を離れたかったらしいのですが、ずっと胃の調子が悪く、ついに耐え切れなくなって宿近くの白岩病院へ。そこで周平さんとバッタリと出会ってしまう。そして、翌日、周平さんの店に出向き、年末に取りに来るからと言って偽札の原版を預けて米沢の方に向かう。ところが、預けて3ヶ月後、青森にいた高岡の耳に周平さん達が殺害されたというショッキングなニュースが飛び込んで来る。高岡は直ぐにピンと来たそうです。犯人は絶対、盗まれた偽札の原版の行方を追っていた連中だって。で、怖くなってそのまま身を隠した……』 仮に、周平がそういった連中に高岡の名前を洩らしていたならば高岡の命が狙われる事もあり、高岡が取った行動も理解できた。 『……それと、今回の事件でまだ分からない事があるんですよ』 「何?」 『優花は自分の目をガムテープで塞いでいたじゃないですか』 「うん」 『あれは何の為だったんですか』 「恐らく、他殺をカモフラージュする為。目隠しをして自殺する奴はまずいないからね」 『成る程』 土遊びをしていた紫央里であったが、その遊びに厭きたのか、急に立ち上がってどこかに行きそうになる。それを見た卓司が慌てて呼び止める。 「紫央里 、そっち行っちゃダメだよ !!」 『あれっ、紺野さん、娘さんと一緒ですか』 「うん。今、近くの公園に来てる」 『あっ、そうだったんですか。お邪魔しちゃったみたいですね』 「別に気にしなくて良いよ」 『そういう訳には行きませんよ。娘が年頃になると父親って嫌われるそうですから、今のうちにしっかり遊んでおかないと』 「随分な言いようだなぁ」 『あはははは、スミマセン。それよりも酒でもまた飲みましょうよ』 「うん、分かった」 深瀬との電話を終えて紫央里の右手を握る。ふと見上げた青空に丸い雲が1つ浮かんでいる。 (この世に望まれずに生まれて来る生命があって良いのだろうか) そんな思いが頭の中を駆け巡り、見ていた、その雲が優花の顔に見えてならなかった。                    【完】 (*) この物語は全てフィクションであり、登場する人名、団体は架空のものです。
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