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それからも人集りは、暫く途切れる事は無かった。私の前に来ては一言交わし、私の前に来ては一言交わす。
その一言は「物書きの大先生だって?」だったり、「また良い男が来たね~?」だったりすした。
それからは圧巻だった。あれよあれよと言う間に、家具やら蔵書やらが運びこまれていくではないか。
私は利害を除き、互いに助け合い共存していくこの村の在り方を美しいと思った。
一通り荷物を運びこんで、村の方々が一息ついたところだった。
「夏生様、村の皆様~お握りです」そう言って涼音は、大皿を持ち上げながら現れた。
それを見た村人達は「おぉ~丁度腹が減ったところだった」と口々に言い、私は涼音と顔を見合わせて笑った。
それから、握り飯片手の不格好な談笑会が始まった。
「先生、器量の良い嫁さん貰ったねえ」
「彼女はただの下女です。」
「しかし、芸術家の方は解らんね。この辺鄙な田舎に移り住むとはねえ」
「都会の空気は淀んでる故」
「「はは、そりゃ違いねえ」」
暫く談笑は暫く続き、日も暮れてくると一人一人と村人達は帰って行く。
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