憑いている

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 半刻ほど経ち、懐に持っていた小説を開いて読み始めようとした時だった。  郷役場に父と同じぐらいの年齢の、初老の男性がゆっくりと入ってきたのだ。  私はパタンと小説を閉じ、立ち上がった。それからその男性の方に歩み寄る。 「ほう君が、大山君の息子さんかね?私が郷長だ、宜しく」 「こちらこそ」  目を合わせてから握手をすると郷長は笑いながら、私の肩を何度か叩き歓迎の意を表してくれた。これが痛いのだが…… 「早速、君に住んでもらう家に案内しよう」  郷長は豪胆に笑って私に付いて来るよう促し、郷役場から出て行く。  話によれば、郷長の所有する空き家を父が買い取って私の書生としての居を設けて下さったらしい。
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