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記憶喪失の少年、ユウが高町家での居候生活を始めて、半年が過ぎた。
高町家の人達は、ユウを本当の家族のように接していたので、ユウが高町家の生活に馴染むのに長い時間は掛からなかった。
ユウ本人も、人見知りの性格からなのか?物陰や誰かの背後に隠れていたりしていたが、段々と高町家の人達と面と向かって話そうとしていた。
半年の間に、様々な事が合った。
まず一つは、ユウが士郎と桃子の事を『おとうさん』『おかあさん』と呼んだ事だ。
ユウは二人の事を『しろうさん』『ももこさん』と、いつも他人行儀な呼び方で呼んでいたのだが、ある日、寝惚けていたユウは、士郎達の事を無意識の内に『おとうさん』『おかあさん』と呼んでいたのだ。
士郎と桃子は、ユウに『おとうさん』『おかあさん』と呼ばれると、一瞬だけ固まっていたが、すぐに二人は嬉しそうな顔をしながらユウを抱き締めていた。二人に抱き締められていたユウは、訳が分からず、ワタワタしていた。
・・・その日の高町家の食卓はかなり豪華になり、恭也と美由希はユウに『おにいちゃん』『おねえちゃん』と呼ばせようとしたのは、余談である。
半年の間にあった出来事はまだあり、もう一つの出来事とは、士郎と桃子、二人の夢だったと言う『駅前の喫茶店』を始めた事だ。
その喫茶店の名前は『翠屋』と言い、翠屋は開店してすぐに固定客が何人か出来たそうだ。固定客が出来て、桃子達は本当に嬉しそうな顔をしていた。
・・・しかし、出来事の全てが、いい事ばかりでは無かった。
翠屋が開店した後に、出来事が起こった。
高町家の大黒柱、高町士郎が事故にあって入院したのだ。
容態は酷く、士郎の身体にはたくさんの包帯が巻かれて、病室のベットで意識不明の重症だった。
士郎が倒れた事で、高町家にも変化が現れる。
桃子は、家の家事や子ども達の世話をしながらも、夫婦の夢だった翠屋の経営も続けていた。桃子は、子ども達には辛そうな様子は一切見せず、子ども達の前ではいつも笑顔だった。
恭也と美由希は、剣術の練習を止め、家や翠屋の手伝いをしていた。
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