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赤、青、黄色の家、
沢山並ぶ兼営住宅、
少し高めのマンション。
右側から目の前に来た途端、
すぐに左側にいき見えなくなり
消えてしまう。
奥にある山も少しずつ
ズレていく。
景色も枠に区切られていて
これからどんな家が見えるかわからないし、過ぎて行ったものを見続けることもできない。
「うっ……」
やば、気持ち悪…
景色があまりにも早く変わるから
目が回ったか…
口元を手で押さえ、
鞄からポカリをだして蓋を開けて口に含んだ。
それでほっとなり、
一息ついた。
またちらっと外を見ると、
歩いている人が一瞬見えた。
自転車を漕ぐ人も
バイクに乗る人も一瞬で
抜かしていく。
高速道路に走る車をも、
軽々と抜かしていくのを見て、
「ほんと、
新幹線って早いな…」
少し感動して声を漏らした。
また移り変わりゆく景色を
見入っていると、
小さな女の子がこっちに
手を振っているのが見えた。
俺も新幹線によくやったな…
そう思いながら、
振り返そうと手を上げが、
一瞬で女の子は左側にズレ、
見えなくなってしまい、
目の前はトンネルに入ったのか
真っ暗になっていた。
窓には黒い鏡に、
上げかけた右手が虚しく、
笑顔になりかけようとしたのか
口元が上がりかかり、
半目になった
マヌケな表情が映っていた。
何か恥ずかしくなり、
すぐに正面を見るが
目の前には他の人が乗っている
座席の後ろがしか見えなく
つまらない。
周りはおばちゃんの
騒がしい談笑や、
香水やら、体臭やらで
何か変な臭いがする。
ほんとに気持ち悪い…
景色でごまかしてたのに…
俺はため息混じりで
黒しか映さない窓を見た。
つまらなさそうで
不機嫌そうで
ちょっぴり悲しそうな
表情の俺が映る。
新幹線に乗ったのも、
この空間に押し込められたのも
こんな表情にさせるのも、
全部、今から向かう所が
原因なんだよ。
そう………それは、
ほんの数日前に至る……
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