プロローグ

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右手の松の木の間に 建物が見える。 コンクリート作りの小さな 公園管理事務所だ。 その灯りのついた建物に 近づくにつれ、 なぜか女の表情はどんどん 強張(こわば)っていく。 事務所の30メートル程手前で 女は突然スピードを緩める。 浅く肩で息をしながら、 歩くような速度になり、 そして立ち止まった。 女が大きく2度 深呼吸をした時、 突然静かだった林に 大きな機械音が響いた。 管理事務所の陰から 大きな車が飛び出してきて、 女の前で停まった。 パッと周りが明るくなる。 ヘッドライトが着いて、 彼女を照らした。 女は7~8メートル飛び退き 距離を取った。 風が吹き、 周りの松やクヌギの木の 葉と枝がザワめいた。
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