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「俺はお前の事など、微塵も思っていない」
「それは、それは優しさでございますね!?」
「は?」
光は両手を組み、大和に駆け寄る。
「巨大企業を潰す責任を一人で背負う!それは危険過ぎる正義!だから、だから、わたくしの想いに答えられないのですね!?」
前向き過ぎる光の見解に、普通なら誰もが和む。
「ご安心下さい大和さま!わたくしはどんな苦労も乗り越えて見せます!貴方さまがいれば、わたくしは……!」
しかし、大和はそれでも表情を崩さなかった。
「勘違いするな、俺はお前に興味が無いだけだ」
「どんな事も致します!出来ぬ事も苦手な事も致します!だからどうか、どうか光を大和さまの側に置いて下さいまし!」
光の覚悟は既に大きかった。何が何でも、大和の側にいたかった。
笑顔を絶やさぬまま懇願する彼女を振り払い、大和は車に乗り込んだ。
「無駄だ。来るな」
「大和さま!」
光の目は潤み、今にも涙を流してしまいそうだった。
この四日間で光との間に培っていたはずの情や絆すらも、今の大和には無い。
「……じゃあな」
走り去る車を、光は膝を着き見送った。
バックミラーを見た大和は、その光景を見た事に後悔する。
光は最後まで微笑んでいたのだ。
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