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「だろうな。だが、俺がやらねば誰もやらなかった」
大和と梢の間にタバコの煙が渦巻く。
「今回は現当主の樹1人を連れて行くが、捜査の進行次第であんたにも来てもらう」
「ええ、やってみなさいな」
樹によるホールディングス転覆、さらには陣の殺人。それらにも屈っすることなく、梢の瞳には未だ虎の不屈が見える。
「一つ忠告してあげる。今回の件で、長門ホールディングスをはじめ、末端企業に至るまで、多くの恨みを貴方は買った」
なかには梢ですら手を焼く企業や、未だに樹側の企業も存在する。
巨大過ぎる長門の名には、様々な派閥も存在するのだ。
「仕事はもちろん、私生活でも注意することね」
「ああ。覚悟の上だ」
「それと……光、あれを」
光が、大和に一歩近付いた。
彼女の手には二部の契約書があった。
「我が長門家は、セキュリティ会社の契約を御社に決めました」
光が微笑んでそう言うと、大和は思わずタバコの火を消した。
「……本当か」
「さきほど家族の認を取り、確定致しました」
表向きの目的であるセキュリティの契約も、大和は獲得したのだ。
だがそれも無理はない。大和は試練を突破し、五の契約印を獲得していた。
契約の資格は十分に保有していたのだ。
「仕事は仕事。大和、貴方は仕事をやり遂げた。だから、こちらも仕事としてこれに応える。是、契約」
「了解した。感謝する」
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