鈴の章

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ガラス張りの自動ドアから入った瞬間、食堂独特の様々な料理の匂いや、洗剤の生ぬるい匂いもした。 料理の匂いは、そのどれもが濃く、食欲をそそる。 中央に並ぶ長い卓では、様々な制服を着た屋敷の使用人たちが、談笑をしながら食事を行っていた。 「ここが、屋敷の住人全員にも解放された食堂になります。本来はお客様の目につく場所での食事はいたしませんが、本日はご案内も兼ねて特別にご紹介いたします」 八角の広い空間は大きな窓も設置され、昼なら日当たりもいいと感じる。 間取りの一辺にはそれぞれ、ファーストフードやそばにうどん、中華や和風料理まで、様々なブースもとい、店舗が設置されていた。 「すべて一流店の味を再現した本格派です。特に秋は本場のそば粉を使ったお蕎麦がお勧めですが、春先の現在はセロリや春キャベツなどを使った和風のサラダがお勧めです」 「ほう。なかなか充実しているな」 「よかったら、わたくしがお支払いしますので、お好きなものをご注文下さい」  
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