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肌を黒くし、メイドの格好をした妹。
「まるで3年前のあたしを彷彿とさせる格好。忘れかけていた、あたしのトラウマを思い出させたのよ」
赤城は嫌味以上の嫌がらせを、メイドであり妹である光に感じていた。
「光が?」
「ええ。あの妹は一族でも異種」
確かに梢や赤城昴に抱いた独特の粘り気を、光には感じない。
「ある意味では外の血である、本当の父親に最も似ている。なにを考えているか分からない」
外の血。本当の父親。死んだはずの。
様々な疑問のなか、一周したなかで最も大きな穴を大和は問う。
「……なんのために戻って来た? お前にとっておぞましい、この屋敷に」
「仕事よ。契約に決まってるじゃなあい」
「……違うんだろ」
大和には確信があった。
熱気の中でも鳥肌が立つ程のトラウマを抱え、わざわざ忌まわしい100LDKに戻るはずもない。
その痛みは仕事への忠義を越えている。
「……あなたには敵わないわあ霧彦さあん。ふふ」
赤城の笑いが不意に震える。
「ふふ……ふっぅ、ぅあぅっうっ……ぁあ!」
赤城昴が屋敷への再来の理由。
その問いになった瞬間、彼女の表情が崩れていった。
「ぅっうっ……ああ! あぁあ!」
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