陣の章

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「ぐっお!」 直後、大和の背中に痛みが走る。 そして耳下に女の息が。 「……あたしもね、戸惑ってはいるの」 戸惑い? 「でも、言ったでしょ霧彦さあん?」 どさくさに紛れ、赤城昴が大和の隣まで近づいていたのだ。 その手には先ほどまで履いていたヒール。片方だけの。 「がっ!あ!赤城ぃ!」 耳元にかかる生温かい吐息と共に、刃先がぐるりとねじ込まれる。 彼女の履いていたヒールには隠し針が備わっており、その刃先は数cmだが大和の背中を突き刺していた。 「あたしは時を見計らう事にしたの」 大和が怯んだ隙に、赤城昴は彼の腕から鈴を奪う。 次の瞬間には、昴の胸元に泣き叫ぶ鈴がいた。 「鈴を奪い返すチャンスを。ずっと計画していた」 誰にも邪魔はさせない。 母親が血濡れた手で娘を奪還したのだ。 同時に抜かれたヒール。 昴へ食って掛かろうとした瞬間、大和の目前に二股の槍が。 彼女の肩から雷鳴斗が伸びていた。 母親の背後に樹が立ち、迫る大和を止めたのだ。 大和の勢いを殺すと、二人はゆっくりと後ろへ下がる。  
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