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自分本位な思い込みから逃れて、呼吸がし易くなった感じがする。重く張りつめていた気持ちは晴れて、これからも彼女を自分なりに愛していこうとあらためてそう思えた。
ラブレターに書いた、
“どんな時もあなたの心が穏やかでありますように…”
その言葉を、自ら嘘に変えてしまわないように。
それはオレにとってとてもたいせつな“気づき”だった。だけど、その想いに基づいて行動を起こせなければ、そのことをほんとうに解ってることにはならない、ということもオレは知っている。
だから…
ネットショッピングで“カミカラ”を購入して、ペンギン爆弾を作ってみた。
前からそういうこと、やってみたかったのだ。奈央さんとふたりの時、何か面白いことを共有して、共に笑えるようなことを。
ラブレターを渡してから、彼女には3度会った。オレの気持ちに対する返事は無かったが、いつも彼女はにこやかに普段と変わらず親切に、オレに接してくれた。その時に感じたことを…自分の感覚こそ信じるべきだ。
“すくなくとも、オレは嫌われてはいない”
だったら…
“あなたを傷つけることを、オレはしたいわけじゃないんですよ”
だから、
“どうか、怖がらないで”その気持ちを、今はどうにかして伝えたい。
見るからにかわいらしいペンギンが、オレを助けてくれると信じた。作る手間が時間がかかるほどに、それが少しも苦にならないことがうれしかった。
そして…
章の冒頭にある会話を交わし、ペンギン爆弾は正常に作動し、与えられた役目をきちんとはたしてくれた。ほほを真っ赤に染めた奈央さんの笑顔…。
あんなにかわいらしい彼女の姿は…
初めて、視た。
“なんだよ、オレ、しあわせじゃん!?”
そう思えたらしめたもの。たとえそれが勘違いであっても、オレはおめでたくこの恋路をまっすぐに突き進むことができるだろう。
進むべき方向が定まると、がぜん食欲が出てきた。夕方、お気に入りのラーメン屋に行きチャーシューメンの大盛りを平らげた。この日ばかりはカロリーも気にしない。
満腹して家に戻る時、車の運転席から季節外れの花火が見えた。こんな時期に、スキー場のイベントでもやっているんだろうか?
判らなかったが、なんだかとっても自分が祝福されているような気持ちになった。
オレの頭の中はすでに、
もうすっかり春、
のようだ。
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