愛、する

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“愛する”ってことは、心の中で“想う”こと…ずっとそう思っていた。 言うまでもなく“愛”の定義は人それぞれだから、“これが正解”という答を得ることはできない。 オレの、個人的な見解。 今はちょっと違ってて… “愛してる”って気持ちが、相手に伝わるように何かするってことが“愛する”ってことなのかな?そんな気がしている。 もちろんそれは、いつも胸の内でその人のことをたいせつに想っているからなんだけど。 愛を伝えるってことが、今のオレには愛するってことなんだ。 クリスマスカード、手渡しの年賀状、メッセージカードを添えたバレンタインのチョコレート、ホワイトデーのクッキー…。 特別なイベントの時に贈る品々や言葉だけではない。 普段の生活の中、スーパーのレジで顔を合わせた時に交わす言葉の中にも“好きだ”の気持ちが織り込まれてる。 『眼鏡が似合いますね』 『いつも丁寧な仕事ぶりですね』 『寒いから、風邪をひかないように』 って感じで。 うん、たぶんこれも愛。 そして言葉にしなくても伝わってしまうことがある。会えば自然に顔がほころんで笑顔になれること。なぜか恥ずかしくってほほが紅く染まってしまうこと。 “しのぶれど色に出にけり…” の部分で伝わる想い。これもきっと、愛するってことなんだろう。 そう、以前と違いオレは、奈央さんと離れた場所で、ではなくふたりでいる時に “愛してる” んだ、この身体全体で。恋文で気持ち伝えてからは、なおのことそう想い感じるようになった。片想いで狂おしいほどに募らせた、自分にとっては唯一確かな想いでも、伝えなければ、 “彼女にとっては無いにひとしい” とそう気づいた。 それは、つまり… “ふたりにとって、無いにひとしい” ということだ。 そんなの…さみしいよな。
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