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そう…オレは
“彼女に何も背負わせない”
と、心に堅く誓っていたはずだ。
オレの胸のうちの想いがいかにオレにとって確かなものだろうと、いったいそれがどうした?
昼休みにしゃべった時、花岡さんが言ってたように
『じゃあ、そのラブレターに書いたこと信じてもらわなきゃね』
って、そういうこと…だよな。
胸を焦がす、いかに熱く、混じりけない想いであろうと、いやそれだからこそ
“見返りに何も求めない”
そう、心に決めていたのではなかったか?
“信じてもらうこと”を、今までオレがしてきたこと、伝えてきた気持ちのゆえに当然の権利のごとく求めていいと、そう考えてはいなかっただろうか?
信じてもらえているかどうかは、わからない。信じてもらえてないのなら、そして信じてもらいたいのなら、信じてもらえるようにこれから行動を起こすべきなんだ。
それに…
“はたしてオレは真実、奈央さんのことを信じていたのだろうか?”
別の自問が耳の奥に響く。
しっかり者だから、やさしい人だからと、オレのこの想いに必ず返事をくれるはずと…信じていた。
しかしそれすらも身勝手な思い込みにすぎないのではないか?
オレにとって“信じる”ということは、自らの思い込みに従って行動し、期待どおりの結果が得られずとも悔いは無い。そう腹をくくること…だったはずだ。
なら、“期待外れだ裏切られた”と騒ぎたてるのはおかしな話だ。他ならぬオレ自身が、自分を裏切ろうとしてるんじゃねぇか…。
悲痛な想い抱えて、来るかどうかもわからない彼女を独り待つ。まだ寒さの残る夜のスーパーの店頭で。…って確かに、センチメンタルでドラマチックな光景でオレ好みなのだ。悲劇の主人公気取れるもんな。
だが、オレがほしいのは、そんなもんだったっけ?それで言いたいことを告げて、気が済めばそれでいいのか?
心の底から望んだのは、そんなつまらないことだったっけ…?
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