[1] 初夏

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「あぁ……あとは俺がやるよ」  これ以上、何もかも公輝にやらせるのは偲びない。  けれど公輝は首を横に振って、 「俺がやるからいいよ。で、どこ?」 「えっ……あ……玄関の隣……」 「りょーかい」  全く俺って奴は!  そういえば実家にいる頃、何故か公輝は掃除やら洗濯やら、料理まで嫌な顔一つせず率先して行っていた。  親父と母さんが旅行に出掛けた時も、夜遊びする前に公輝が全部家の事を片付けていたし、もしかしてコイツは――良いお嫁さんになるのでは?  って、バカ! 公輝は男だっての!  一人心の中で突っ込みを入れていると、脱水所から戻った公輝は、 「掃除機どこー?」  今度は掃除機の在処を尋ねて来た。 「あぁ、それならそこの押し入れに――」  結局、公輝が全部一人で片付けてくれて、俺はただボーッと邪魔にならない所で座っているだけだった。  なんて不甲斐ない兄貴だ……。  
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