[1] 初夏

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 そしてこの夏は地獄だ。  冷房設備のないアパートは灼熱地獄で、扇風機はこの暑さに圧巻され、本来の役目を果たしてくれなかった。  心地の良い風ではなく、焼けつくような温風は余計に暑さを増長させる。  けれど扇風機でもなければ、今頃俺は熱射病で死んでいたかも知れない。  取り合えず、毎晩寝る前に水分補給を欠かさず行ってはいるが、朝起きると敷き布団が汗でぐっしょり湿っている。  パジャマは基本的に着ない。  どうせ夜中に目が覚め、着ているパジャマを脱ぎかねないから。  それなら一層の事、初めから着ない方がマシだ。洗濯物を増やす事は、後々の面倒が増えるだけ。  そしてこの夏の暑さが異常らしい事は、週に一度届く親父からのメールで把握している。  なにせ、このアパートにテレビは置いていないからな。  ――七月初旬の休日。  蝉の鳴き声に叩き起こされ、いつものように起床すると親父からメールが届いていた。 《公輝が家出した。お前の所に来ていないか?》  
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