[1] 初夏

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 公輝(こうき)は俺の弟で、中学一年生。三人兄弟の真ん中で一番の問題児だ。  小学五年の頃から夜遊びが頻発し、家に帰宅する時間は日を跨いだ深夜一時が多く、稀に朝帰りする事もあった。  マセガキで年上と良く遊んでいたし、外見は年相応なのだが悪知恵もあり、言葉遣いも悪い。  目上の人間に対して腰が低く、けれど身内である俺や親父にはその限りではなかった。  なんていうか、威圧的な態度でろくに話も出来なかったし、俺から話をしようともしなかった。  結局の所、公輝とは仲が良いとか悪いとかそういう関係性はなく、ただ単に『同じ家に住む子』という思いしかなかった。  弟だと感じた事もないし、思った事もない。  公輝が小さかった頃も、俺には懐かなかったし、その都度の開口一番が『こっちにくるな』だった。  独りを好む性格なのかと思ったが、母さんには偉く懐いていたし、親父にもまぁそこそこに。  俺だけが拒否。  はっきりいうと、俺は公輝が嫌いだ。可愛くないし。  だから好きにさせてやれば良いんだ。世間の怖さを思い知れば良いんだ。  
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