[1] 初夏

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 中学生の家出なんて珍しい事じゃない。  ましてや、あの公輝だ。  いつか家出するだろうとは思っていたし、さして驚きもなかった。  親父からのメールは検討外れも甚だしい。 《公輝が家出した。お前の所に来ていないか?》  来るわけないだろ。  俺を遠巻きにしているのだから、逆に来る方が驚きだ。  一応、このアパートの住所は知っているらしいが、だからといって公輝がやって来る確率はゼロに近い。  それに家出するなら友達やら、先輩やら、公輝には何かしらの友人が居る。  その選択肢の中で、俺を選ぶ確率は皆無だ。自分でいってて、悲しくはなるが……。  親父には申し訳ないが、 《検討違いだ。他を当たってくれ》  と、メールで返答した。  親父も薄々分かっていた事なのか、それきりメールの返事は送られて来なかった。  が―― 《健斗がアンタに会いたいみたいよ》  今度は母さんからメールが届いた。  
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