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けれど、痛みに苦しむ『コイツ』にいう台詞じゃない。
覗き穴から確認しなかった俺も、大なり小なり非はあるかも知れない。
「……いってぇなぁ。なにしやがんだっ!!」
漸く反応したかと思うと、開口一番がそれかよ!
しかもその声には聞き覚えがあった。
そして、顔をあげる『何者か』は紛れもなく、
「こ、公輝……!?」
俺の大嫌いな弟、公輝だった。
目一杯に涙を溜めていたのは、たぶん痛みに伴うものだろう。
それよりコイツは何をしに来たんだ?
「お、おま……家出したんじゃ……」
「家出したからここに居るんだけど? お前、馬鹿なの?」
頭を擦りながら、平気で俺を馬鹿呼ばわりするとは――さすが、口の悪い弟様だ。
擦っている頭を叩きたくなかったが、その気持ちをグッと堪えた。
けれどこの弟ときたら、
「お前太った? どうせ飯はコンビニかスーパーの弁当だろ?」
俺の食生活を見事にズバリ当てやがった。
確かにコンビニやスーパーの弁当が大半で、けれど自炊も週に二、三回はしている。
というか――
「何故、ここへ来た?」
――俺が一番知りたいのは、何故公輝がアパートにやって来たかという事だ。
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