[1] 初夏

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 けれど、痛みに苦しむ『コイツ』にいう台詞じゃない。  覗き穴から確認しなかった俺も、大なり小なり非はあるかも知れない。 「……いってぇなぁ。なにしやがんだっ!!」  漸く反応したかと思うと、開口一番がそれかよ!  しかもその声には聞き覚えがあった。  そして、顔をあげる『何者か』は紛れもなく、 「こ、公輝……!?」  俺の大嫌いな弟、公輝だった。  目一杯に涙を溜めていたのは、たぶん痛みに伴うものだろう。  それよりコイツは何をしに来たんだ? 「お、おま……家出したんじゃ……」 「家出したからここに居るんだけど? お前、馬鹿なの?」  頭を擦りながら、平気で俺を馬鹿呼ばわりするとは――さすが、口の悪い弟様だ。  擦っている頭を叩きたくなかったが、その気持ちをグッと堪えた。  けれどこの弟ときたら、 「お前太った? どうせ飯はコンビニかスーパーの弁当だろ?」  俺の食生活を見事にズバリ当てやがった。  確かにコンビニやスーパーの弁当が大半で、けれど自炊も週に二、三回はしている。  というか―― 「何故、ここへ来た?」  ――俺が一番知りたいのは、何故公輝がアパートにやって来たかという事だ。  
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