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静かな闇に包まれた、夜景の綺麗な展望台の駐車場で、バタンッと車のドアを閉める音が2つ響いた。
辺りは、ちらほらと人影が散らばっている程度だった。
「どのくらいぶりだろう」
「前の記念日以来だから、2ヶ月くらいかな?」
歩きながら声をかけてきた悠斗の言葉に、秋菜は優しく言葉を返した。
「2ヶ月か…2ヶ月前と今とじゃ、夜景の見え方が全然違うな」
「そう?私にとっては、いつ見てもとても綺麗に見えるけどな」
秋菜の笑顔が、街から少しだけ届いている光に照らされた。
2人は、柵が並ぶ場所を通り過ぎ、草の茂った人気のない道へと足を進めた。
獣道とまではいかないが、夜景を見に来た人が通るような道ではない。
草木で光を遮られた暗闇の山だ。
2人は、しばらく無言のまま歩き続けた。
両脇の木々を抜けると、素晴らしい絶景が2人を待っていた。
邪魔する木々は景色に映っておらず、柵の並んだ展望台とは美しさが格段に違った。
「やっぱり、ここが1番綺麗」
「だね」
「記念日は絶対に来てたもんね。私達だけの絶景」
秋菜は膝に手を回すようにかがんだ。
悠斗は、散りばめられたどこかの光を見つめたまま立っていた。
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