×想いに及ばぬ宝石の闇×

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「悠斗」 「ん?」 「私、ずっと悠斗のそばにいたい」 秋菜は悠斗を見上げた。 悠斗は、光を見つめたままだった。 「やっぱり、捕まったら刑務所に入るのかな?」 「そう、なるだろうね」 「じゃあ、私も罪を犯せば一緒に刑務所に入れるかな?」 「刑務所は男と女は別だから、一緒にはいれないよ」 「だよね」 秋菜は微笑んだ。 秋菜も顔を前に向き直し、悠斗と同じ方向を見つめた。 次第に、秋菜の瞳から涙がこぼれた。 「俺は、遠いところへ逃げる」 悠斗も膝を曲げて隣にかがんだ。 「どこへ行くの?」 秋菜は潤わせた瞳を悠斗に向けた。 「警察に捕まらない、遠いところさ」 「外国?」 「外国か。ジェスチャー、伝わるかな」 「大丈夫よ、きっと」 闇の中に輝く秋菜の笑顔は、悠斗の横顔を笑顔にかえた。 「私を救ってくれた、大切な悠斗」 「救ったって言っても、秋菜のお父さんを殺したんだ」 「お父さんが今頃生きてたら、DVで私が死んじゃってたわ」 秋菜はシャツの袖をまくり、たくさんのアザをあらわにした。 「私は悠斗だけだから、一緒にいないと生きてる意味がないの」 「…一緒に来るのか?」 「男女の逃亡劇ってカッコイイじゃない。ボニーとクライドみたいで」 「カッコイイっていう理由でか」 今度は、お互い顔を見合わせて笑った。 目の前の絶景に負けない、純粋な笑顔だった。 「絶対に捕まらないから、安心してな」 「わかってるわ。ずっと一緒だもん」 「よし」 2人は手をつないで立ち上がった。 そのまま肩を寄せ合い、凛とした月の下で軽いキスをした。 「行くよ」 「うん」 2人は何のためらいもなく、絶景に飛び下りた。  
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