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真っ暗な廊下に、窓から差し込む四角い光。
それが浮かびあがらせているのは人影だけでなく、廊下一面に所狭しとつけられた赤い手形もだった。
異様な光景を目に入れながらも俺達は進む。あの人形を持った女を捜すために。
夢は少し汗ばんでいる俺の手を、しっかりと握ってきた。
ゆっくりと、五人の足音が、幽霊のいる校舎内に響く。
「ね、ねぇ。どこにさっきのはいるの?」
夢が恐怖を押し隠した声で、しかし微かに震えを含ませながら呟いた。
「分からない」
そう答えながら、近くにあった教室の扉を開けた。
ガララッと、ゆっくり開けたはずなのに、思いのほか大きな音がなったせいで、その場にいた全員が肩を跳ね上がらせる。
中になにもいないのを確認して、扉を閉めた。
「ねぇ、なにかヒントみたいのはないのかな?」
中野がせわしなく周囲に眼球を走らせながら、ビクビクした様子で言った。
「ヒント……。あっ、そうだ。学校の七不思議でなにかないのか?」
俺は中野の腕にしっかりとしがみつている、あやに聞いた。
「ど、どうだろう……ちょっと待って。今、思い出すから」
額に手を当てて悩み始めたあやを見ながらも、廊下の端などに目を走らせる。
いつ、どこで、どうやって、あの女が現れるのか予想がつかない。
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