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音楽室に続く長い廊下。ここも赤い手形で一杯だった。
カツン、カツン。
俺達の足音が響く。
息遣いと足音しか聞こえないこの薄暗い空間。窓から見える景色は別世界のように見えた。
……いや、この空間が別世界なんだっけ。ありえないだろ、なんなんだよ、この状況は。
知らず知らずの内に滲んできた汗を袖で拭いながら、歩き続ける。
角が見えてきた。
これを右に曲がれば、音楽室までは一直線。
「ひゃあ!?」
「うわぁ!なんだよ、夢!」
夢のいきなりの大声に、その場にいた全員の心臓が跳ね上がったに違いない。
当の夢は、恐る恐るといった様子で、自分の足を確認していた。
「い、いや、今、足になにか触れた……」
「あ、はははは。なに言ってんだよ。こんな状況で、触るやつがいるはずないだろ……?」
「うぅん、絶対に触……いやぁ!」
またの声に、俺の心臓は自己主張をさらに高めた。胸を突き破って外に出ようとするように暴れまわるそれをなんとか静めながら、夢をもう一度見る。
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