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自分の足元を見ながら、夢は叫び声を上げたままの体勢で固まる。
そして。
ギギギ、と。
錆びついたような音が出るのではないかと錯覚してしまうほど、ぎこちなく首を動かして俺を見上げてきた夢の瞳には、微かに涙が溜まっていた。
口をパクパクと小さく開閉して、なにかを伝えようとしてくる。
「……どうした?」
「あ……し……」
「あし?足?」
こくこくと何度も頷く夢を見て、俺は彼女の足の方に視線をやる。
「う……あっ……」
そこには。
薄暗い廊下の地面から、ボンヤリと、青白く光る手が、生えていて。
それがうねうねと軟体動物のように気持ち悪く、骨などないかのようにぐにゃぐにゃになりながらも。
その腐ったような匂いを発しているその腕で、しっかりと夢の足を掴んでいた。
「う……うぁぁぁぁぁ!!」
「もういやぁぁぁあぁぁぁ!!」
「夢!!」
皆が走ってどこかに行ってしまう前に、夢を掴んでいるその手を踏みつける。
一瞬だけ力が緩んだその瞬間を見逃さずに、夢を引っ張って一緒に走り出す。
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