鬼ごっこ

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走って、次の角を曲って。 月明かりに照らされた廊下の奥に、音楽室のプレートが見えてきた。 さっきの手はどこにも見当たらない。 このまま何事もなく行けると思った。 だけど。 にょき、と。 また、手が生える。 廊下の地面から、天井から、赤い手形がついている場所から、まるで骨のない軟体動物のようにくねくねと気持ち悪く蠢きながら。 「ひっ!」 一瞬、この光景のせいで呼吸困難に陥るかと思った。だけどそれも一瞬で、懸命に走り続ける。 「走れ、もっと走れ!!」 誰かがそんな声を上げた。 いまだに新しく生えてくる無数の腕。 ハリセンボンの針をグロテスクにしたような光景が、目の前に広がっている。そんな中、俺達は懸命に走り続け、そしてようやく、音楽室の前にたどりつく。
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