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(……と、そうじゃない)
小さく頭を振って前の会長を見る。
会長は静かになった空間で堂々と挨拶文を述べていた。
本当はこういう挨拶は校長がするものなんだが、校長は変わり者で学校にいることが少ないんだそうだ。
だから今の校長の代から生徒会長が挨拶をすることになったらしい。
まぁ、実際こうして皆目を輝かせて大人しくしているわけだから良かったのかもしれないけど。
会長の話を半分聞き流しながら窓に目を移す。
(あー、今日も暑そうだな)
空調が効いた講堂内の外は猛暑だった。
寮生活では滅多に外に出ることがないから夏という実感があまりないが、外では蝉がミンミンと煩く鳴いている。
………分かってる。 これが現実逃避しているだけだってことくらい。
でももう俺は舞台を見ることは出来なかった。
何故なら。
「――以上」
そこで会長の言葉が終わり、歓声がまた響き渡る。
耳を塞ぐことも忘れて俺は窓から見える空を見つめた。 まるで窓の外に何かいるかのように。
見つけられるとは思っていなかったのに、バッチリ気づかれてしまった。
会長の目を思い出して胸がざわつく。
俺がこの学校で一番場違い……身分不相応だと思っているのが、会長と俺が付き合っていることだ。
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