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もう会長は舞台を下がっているのにまだ壇上を見ることが出来ない俺は、現実逃避ついでに告白された日の事を思い出していた。
「それじゃ、放課後屋上に来てくれ」
そう言ったのは会長の親衛隊隊長だった。
会長の幼馴染の隊長は、小さくて女の子みたいな見た目に反して男前な性格で有名で生徒会に次ぐ人気者の一人。
そんな人に放課後の呼び出しをされたものだから、いくらノンケだと自負している俺でも少しドキドキしてしまった。
(って何俺はドキドキしてんだよ)
そう自分に言っても気持ちは正直で、少しの嬉しさと戸惑いが交じり合った気持ちが胸をいっぱいにする。
もし告白だったら俺、付き合ってもいいかもしれない。
上から目線で大変失礼なことを思いながら、放課後を楽しみにしていた。
脳内では既にデートをしていたなんて絶対ヒミツだ。
その後ずっとぼんやりと過ごしていたから気づいた時には放課後になっていて。
俺は足早に屋上に行った。
キィ
扉を開いた途端に広がる茜色の空に一瞬見惚れながら、待っているであろう隊長を探す。
(あれ、いない……)
早く来すぎてしまったんだろうか。
思いのほか浮かれている自分を恥じながらフェンスへと向かう。
すると後ろから扉の音が耳に入ってきて、隊長が来たんだとまた心臓をドキドキさせながら振り返った。
浮かんだのは勿論可愛い隊長の姿。 けど実際そこに居たのは。
「か、会長……?」
「待たせたか、悪い」
そこには可愛いとは正反対の、隊長の幼馴染様が立っていた。
ちょ、なんで会長!? 隊長はどうしたんだ!?
頭が混乱して反応できないでいると会長が目の前までやって来る。
あー、同じ年なのにカッコイイな、クソ。
思わず無意識に嫉妬してしまうくらいに、間近で見る会長はもっとカッコ良かった。
「えーっと、どういうことですか? 俺隊長さんに呼ばれたんですけど」
「あぁ、お前を呼んだのは俺だ。 忙しいからアイツに頼んだんだ」
「(何だってーー!?) そ、ですか……」
一瞬にして隊長とのデート像が消え去った瞬間だった。
俺、一人で勘違いして舞いあがってたのか……。
クソッ、俺恥ずかしい奴。 大体隊長が俺を恋人にしたいなんて思うわけないだろ!? 馬鹿俺、俺の馬鹿。
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