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只、会長が少し傷ついたような顔をした時に胸が痛んだけど。
「……馬鹿にしてるのか? 俺が、冗談で男に告白するとでも?」
「そういうわけじゃ! ただいきなりだったんで」
「……それで? 圭介の返事は?」
「っ……」
そんなこといきなり言われても困るに決まってんだろ!?
けど会長は返事を聞くまで帰すつもりはないようだ。
あー、そんな、どうしろと。
溜息を吐きたくなるのを我慢して会長の顔から視線を逸らす。
(……あ)
会長の手、震えてる。
握りしめた手は真っ白になって震えていた。
もしかして会長、緊張してるのか?
そう思った瞬間胸から何かが浮き上がってきて。
「……よろしく、お願いします」
気づいたら俺はOKを出していた。
(今思っても俺、ありえないよな……)
あの時の自分に今でも呆れてしまう。
俺はOKした。 けど会長のことは好きじゃない。
いや、正確に言うと好きだけど、たぶん恋愛未満の好きだ。
なのにあの時の俺は、別の理由でOKしてしまった。
緊張している会長を見て、この人との繋がりをなくしたくないと思ったんだ。
どの形でも良い。 この雲の上の人との繋がりが欲しいと。
例えそれが恋人であっても。
(最低だな、俺)
終盤を迎えた終業式に耳を傾ける。
会長の話を聞き流したのも、目が合ってから逸らし続けたのもこの罪悪感から。
だったら別れを切り出せば良いのにそうすることが出来ない俺はなんて卑怯なんだか。
「はぁ……」
式が終わりざわつき出した講堂内で大きく溜息を吐くと教室へと向かう為に出て行く。
その途中で友人を見つけて他愛ない話をしていると、突然友人が肩を叩いて指をさした。
「圭介、あっこに会長いるぞ」
「え? ……ホントだな」
講堂の入り口に会長が立ち止まっていた。 周りに人が群がっていて動けないようだった。
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