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「来ないで!どうして追いかけてきたの!」
「琉乃!話聞けよ!」
逃げても逃げても、私と歩希さんとの距離は縮まる。
「琉乃!」
0センチ。
私は歩希さんに捕まってしまい、歩希さんとの距離が0センチになった。
強く抱き締められて、頭がくらくらする。
「っ…ぅ」
涙が止まらない。
泣きたくない。
なのに止まらない。
「話……聞いてたんだろ?」
ゆったりとした口調で話し出す歩希さんの言葉に、ゆっくり頷く。
「……愛美ちゃんを忘れたくて私と付き合った。そして、流れで結婚した…」
「………確かにその時はそうだった…」
私は歩希さんから静かに離れた。
「でも…私を好きじゃないのは事実でしょ…?」
涙で濁る視界の中、歩希さんを真っ直ぐ見つめた。
「……っそれは…」
「愛美ちゃんさ……今、彼氏いないんだってさ…」
「……琉乃」
少し怒ったような声のトーンにビクッとしながら、言葉を続ける。
「まだ好きなんでしょ?ならチャンスじゃん…。私なんかと早く離婚しなよ…。………あぁ、でも離婚も何もないか」
「っ…!」
最後の私の言葉に、歩希さんは目を見開く。
「ほんとは籍……入れてないもんね」
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