愛さなくてもいいから…

10/13

706人が本棚に入れています
本棚に追加
/61ページ
「来ないで!どうして追いかけてきたの!」 「琉乃!話聞けよ!」 逃げても逃げても、私と歩希さんとの距離は縮まる。 「琉乃!」 0センチ。 私は歩希さんに捕まってしまい、歩希さんとの距離が0センチになった。 強く抱き締められて、頭がくらくらする。 「っ…ぅ」 涙が止まらない。 泣きたくない。 なのに止まらない。 「話……聞いてたんだろ?」 ゆったりとした口調で話し出す歩希さんの言葉に、ゆっくり頷く。 「……愛美ちゃんを忘れたくて私と付き合った。そして、流れで結婚した…」 「………確かにその時はそうだった…」 私は歩希さんから静かに離れた。 「でも…私を好きじゃないのは事実でしょ…?」 涙で濁る視界の中、歩希さんを真っ直ぐ見つめた。 「……っそれは…」 「愛美ちゃんさ……今、彼氏いないんだってさ…」 「……琉乃」 少し怒ったような声のトーンにビクッとしながら、言葉を続ける。 「まだ好きなんでしょ?ならチャンスじゃん…。私なんかと早く離婚しなよ…。………あぁ、でも離婚も何もないか」 「っ…!」 最後の私の言葉に、歩希さんは目を見開く。 「ほんとは籍……入れてないもんね」
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!

706人が本棚に入れています
本棚に追加