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だけど、無意味な行動になってしまった。
出口へ着いたときには、歩希さんは私の目の前にいた。
「…っ琉乃」
「っ…」
突然のことで反応できず、私は歩希さんの腕の中に閉じ込められてしまった。
「もうやだ…離してよ…!」
藻掻く私を、さらにキツく抱き締める。
「こんなのズルい…っ逃げられないじゃん…」
滲む涙が歩希さんの服に吸収されていく。
「逃げんな…。もう離さねぇからな…」
いつもの歩希さんとは違い、余裕が感じられない。
「好きじゃないから、期待させないで…っ」
力の入らない腕で押し離しても、ビクともしない。
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