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“姿雪…っ落ち着きなよ…!”
琉乃がファミレスから飛び出したとき、美那の家で琉乃を問い詰めていたら美那は必死に俺を抑えつけようとする。
そんな美那にイライラして、腕を振り払ってしまった。
美那の傷ついた顔。
美那の動揺する瞳。
美那の震える身体。
心臓がドクッと引き裂かれるように痛みだした。
それを振り切るように美那から顔を向けて琉乃の腕を引っ張り、俺は彼女の気持ちから逃げ出した。
琉乃は無事に歩希さんと仲直り。
奪いたい、悔しい、諦められない。
そんな気持ちはもうなかった。
琉乃の恋を応援しよう。
琉乃と歩希さんを見て、俺も真面目に恋をしたくなった。
そう思っていた矢先、美那から告白されて、頭が真っ白に染まった。
歩希さんが気を遣って琉乃を連れながら去ったあとも、俺たちは無言で見つめあう。
「……姿雪を忘れたくない…過去の男にしたくない…っ偽物の恋愛で終わらせたくないよぉ…」
どうしてこいつはこんなにも俺の気持ちを狂わせるんだろうか。
琉乃のことなんてすっかり頭から離れていて、目の前にいる美那がすごくすごく輝いて見える。
涙を流す美那がかわいくて、無意識のうちに美那を抱き締めた。
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