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病院に着き、受付の女の人に歩希さんのお姉さんがいる病室まで案内してもらう。
病室に着いて真っ先にドアを開けたのは当然黒夢くんだった。
「ママ!」
黒夢くんに続いて、歩希さんと私も部屋に足を踏み入れる。
黒夢くんの飛び付いた女性は、茶色くてパーマのかかった髪を揺らしながら黒夢くんの頭を撫でている。
色白の肌に、フワッとした笑顔が歩希さんと同じだ。
「あれ?もしかして……もしかしなくても歩希の奥さん?」
見た目は美形な歩希のお姉さんは、子供みたいに好奇心に溢れた目で私を見つめている。
「は、初めまして!澤田琉乃です!あの……歩希さんと結婚した者です…」
「かわいい子捕まえたのね、歩希!」
歩希さんの背中をバシバシ叩きながら自分のことのように嬉しそうにしてくれるお姉さんに、自然と私の頬も緩む。
「愛李~、これが愛李の叔父さんの手だよ~」
歩希さんの手を大きくなったお腹に持っていき、愛しそうに話し掛けている姿は、“お母さん”だった。
「もうすぐだよな。元気に生まれてこいよ、愛李」
愛李(アイリ)とは、お腹の子だろう。
「愛李って、かわいい名前ですね…」
「でしょう?あ…今お腹蹴られた」
クスクスと笑いながらお腹を擦るお姉さんに、歩希さんは何かを差し出す。
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