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「……あ」
私は、ある指輪に釘付けになった。
シルバーのシンプルなリング。
裏側に名前や文字を彫ってくれるらしい。
まさに欲しかった指輪。
「奥様はこちらの指輪をお気に召しましたか?」
「え……あ、はい。理想の指輪だったので…」
ダイヤなんか要らない。
私は歩希さんの妻だという証が欲しかっただけ。
「なんだ、琉乃。これが欲しいのか?もっとダイヤとか付いたヤツは……」
「そんな高いのいらないよ。私は、歩希さんから貰えるならなんでもいい」
歩希さんに微笑んでみせると、歩希さんは一瞬キョトンとした顔になるが、すぐに笑顔になる。
「琉乃が言うならいいか」
「では、指のサイズや裏側に彫る文字をお確かめさせていただきますので、こちらへ」
案内された席に座り、指のサイズを計ってもらう。
「文字、どうしよっか?」
「お互いの名前をお互いの指輪の裏側に彫ってもらうとか…」
すごい、素敵!
「じゃあ、それにしましょう!」
「ははっ、そうだな」
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