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「俺、昼から仕事あるからちょっと行ってくるな?」
私がまだご飯を食べてる途中、ネクタイを締めながら歩希さんが言った。
「仕事…?」
「まだやり残した仕事があって…夕方には戻るから」
鞄を持って出かけようとする歩希さんの腕を、無意識に掴んでいた。
「でも……まだお昼には時間あるでしょ?もう少し居られないの?」
私のワガママに、歩希さんは困ったように眉を下げた。
「悪い…。早く終わらせたい仕事なんだ…」
歩希さんは、腕を掴む私の手を、そっと外した。
「そっ…か」
「できるだけ、早めに帰ってくるから…」
歩希さんは薄らと笑い、私の頭を2、3回叩くと、家を出た。
ワガママなんて言っちゃダメだよね…。
歩希さんは社長なんだから、忙しくて当たり前なのに…。
それでも、歩希さんのいない静かな部屋に取り残された私は、すごく悲しくなった。
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