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病院に着くとそこは前、朔達が入院していた病院だった。 自然と体が震えてきたと思ったら、魁が肩を抱いてくれた。 魁に肩を抱かれたまま歩くと見慣れた人物が白衣を着て、皆に怒鳴り散らしていた。 「えぇい!お前ら!!ぞろぞろ来るな!重傷者だけ来いよ!!」 …あれは…お父さんの仲間の蒼斗くんだ 『蒼(あお)くん…』 私の呟きに気づいたのか蒼くんがこっちに来た。 「綾!?お前も怪我したのか?」 『え?私じゃなくて…魁なの…?』 そう答えたらまた涙が出てきた。 「綾?泣くなよ~。俺がいるから大丈夫だから…なっ。」 蒼くんにウンと頷くと魁に抱きしめられた。 『沙綾。大丈夫だから泣き止め。』 魁に声をかけられたけど…入院とか嫌だから、ギュッと抱き着いた。 「綾が離れねぇか…。魁!綾連れて診察室入れ。」 『はい』 魁に抱きしめられたまま診察室に入った。 中に入ると魁が椅子に座り、私は魁の膝に座らされ、魁に抱き着いた。 「で?どこだ?」 『腕ですね』 「見せろ。」 坦々と話している魁達の会話を聞きながら、魁の腕を見た。 「あ~深いな…。縫うぞ」 『か…い?…僚我…にやられた…の…?』 途切れ途切れに聞けば苦笑いしながら答える魁。 『まぁな。』 またポロポロと涙を流しながら抱き着いた。 「縫うぞ。綾の目塞いでろ。」 蒼くんはそう言うと魁の腕を縫い始めた。 魁は私の頭に手をやり、胸に押し付けた。 しばらくすると蒼くんの声が聞こえた。 「よっしゃ。魁終わり。次呼んで来い。」 『ありがとうございました。』 魁は丁寧にお礼を言って、私を膝から下ろし、肩を抱いて歩き出した。
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