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故に、ここには彼一人。そしてお隣さんで幼なじみの彼女、「春咲桜」が毎朝彼を起こしにやって来るようになり、晶の作る朝食やたまに夕食を共にするようになる内に昼食の弁当まで晶の作る物になってしまった。
桜の母親は涙目……ではなく寧ろ笑って送り出しているのは桜と母親だけの秘密である。
この日常も既に一年が過ぎ、彼らは今日から高校二年生となる。もはやこの毎日にも違和感という物は無いだろう。
「はい、おまちどーさま。今日は和食だ」
「流石、美味しそうね」
「何せ君の母親の味に近しい物にしたからな」
「そう。いただきます」
リビングの洋式のテーブルに並ぶ和の品揃え。高校生二年生となる彼が作ったとは思えない出来栄えであった。
「ところで、宿題の錬成出来るようになった?結構数多かったわよね」
白米を口に運びながら、桜が晶に問い掛けた。
「一応な。君こそ、中級魔術二つ。覚えたのか?」
「ふふん。勿論よ」
問い掛けた張本人は自信ありとでも言うように胸を張り、その豊満な双丘を強調したのだった。
ここ最近、と言っても今から百年以上も昔の話になるのだが、現代の世界で「魔術」という物が確立された。
炎を出したり、風を巻き起こしたり、等価交換による錬金術で金を錬成したり、更には「魔力」と呼ばれるエネルギーのみで物体を投影したりする事すら出来るのだ。
昔から黒魔術だの、錬金術だのとアテもない絵空事が存在していたが、それが今では一般化し、一般教養として学校のカリキュラムに組み込まれ、魔術を使う守護組織まで設立された。
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