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「わぁお、凄いな……」
そう呟く少年の足元には、大きな旅行用の鞄が置かれていた。
ここは周りを城壁のような壁で囲まれた巨大都市、〔アルカディア〕にあるエリア5駅前である。
時刻は少し遅めな夕方。帰宅するべく駅へ入っていく人も多い中、少年はメモ帳を眺め立ち尽くしていた。
(コレで理解しろって……無理じゃね?)
手元のメモ帳に記されているのは簡単な──というか簡単に描きすぎて逆に難解な地図と、『けっこう前、右、ちょっと左、到着。※徒歩30分』という意味不明な案内。
「無理ゲーだろ……」
「あの、どうかしました?」
どうしようもなく困っていると、後ろから声を掛けられて少年は振り向いた。
そこに居たのは、おそらく自分より年下の女の子。着ている制服からして中学生だろう。
「えっと……誰?」
「通りすがりの中学生です。それより、何かお困り事ですか?」
「そっか、いやー……実は〔外〕から来たんだけど、道が分かんなくて」
どうやら助けてくれそうな雰囲気なので事情を説明してみる。自分より年下に助けてもらうのも恥ずかしい話だが仕方ない。
「なるほど、前の私と同じですね~」
そう言って笑顔を向けてくれた女の子が可愛くて、少年はついドキッとしてしまう。
「それで、行き先はどこですか?」
「えっと、たしか第五学園だったかな」
「第五学園ですね、それならこっちですよー」
女の子は少年の前に出て五メートルほど進み、立ち止まったままの少年に手招きしている。
(これは……ちょっとラッキーかな)
そんな事を思いながら、少年も鞄を持ち女の子を追い掛けた。
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