外界

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   腹が鳴る。  そういえば最近食事をした記憶がない。寝そべった身体を起こすと、腕で支えるのがやっとだった。  金は財布に入っているのが少しある。 「何か食わなきゃ……」  重い腰をあげ、壁に手をついて歩いた。部屋に無造作に投げ捨てられた財布を掴んで、玄関から外を覗いた。  こんなに明るいものだっただろうか。眩しさに驚いた。半分雲に隠れた太陽が異様に大きく輝いて見える。浴びると、溶けて、消えてしまいそうな日差しだった。  その日差しに圧倒されながら真二は誰もいない道を歩いた。暑さに初春の季節を疑ってしまう。つい先日まで肌寒い晩冬だったのに。    この数日の間に変わってしまったものが、また一つ増えてしまったようで寂しかった。  
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