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アルバイトの無料週刊誌を目的に真二はまたあのコンビニに行くことにした。あの店員がいるかと思うと気は進まないが、そんなの気にしてられない。
「いらっしゃいませ~」
喉元の口に近い方から出した適当な声だった。ついさっき来たコンビニでこの定員には相変わらず鼻につく。
ホームレスみたいな真二はまた赤髪の定員に、睨むというよりは……見つめられた。その目には驚きもあったし、軽蔑も、そして嘲笑も混ざっている。
店の入口にある週刊誌を何種類がざっと手に取り、赤髪を一瞥して自動ドアを開けようと足を踏み出した。
「チェッ」
また聞こえる忌々しい単一音。ただ舌を上顎に当て弾き鳴らす行為が至極疎ましく感じた。
「死ね」
今度は赤髪に聞こえるように吐き出した。
「あ゛?」
赤髪は口だけだった。レジカウンターを乗り越えてつかみ掛かって来ることは無かったが、必死に作った威嚇顔で強さを誇示しようとしていた。
真二は一切憶することもなく、またそれ以上歯向かうこともなかった。
開けっ放しだった自動ドアを出ると、もわっとした湿気を感じる。陽は傾いていたが、熱気は未だに空気に渦巻いていた。
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